〇はじめに
3月某日、映画『変な家』を観た。
原作に関して、まず特集を読み動画を観て、小説版は読んでいないという程度の知識量であったため、一部感想が原作ファンのそれとは大きく異なってしまうかもしれないので、ご理解いただきいたい。
また、個人的には面白い作品であったと思うので、もし作品を未視聴でこの感想を読んでいる方がいるとするならば、ぜひ劇場に足を運んでその目で作品を観てから読んでいただけるとありがたい。
↓↓↓ネタバレあり↓↓↓
〇感想
ホラー系動画配信者の雨男(演:間宮祥太郎)が、マネージャーの柳岡(演:DJ松永)から見せられた奇妙な間取り図の謎を追っていくというストーリー。
・一言で言うと「ホラー映画の入門作」
なぜ「入門作」という表現をしたかというと、その怖がらせ方が基本に沿ったものだと感じたからだ。
初めに大きく驚かせてくる、自宅で謎の人物に襲われるというシーンのジャンプスケアでは、「くるぞ、くるぞ......」と観客に心の準備をさせる時間を十分にとっていたと感じた。次に驚かされる、協力者の柚希(演:川栄李奈)が実は正体不明の人物であったというシーンでも、雨男の心情に合わせてゆっくりと視点が移動され、柚希が映るまでの時間を十分にとっていたのも、観客が心の準備をするために適切な時間を取っていたと感じた。
そこまでで、ホラーの基礎を身をもって体験した観客に対して、後半では応用させた驚かせ方も用いられていた。大勢の村人たちに追いつめられるシーンでは、間取りを利用して村人たちの目を欺き、難を逃れたかと他の観客の緊張を一度緩和させてから、大きな音と共に鉈で壁を突き破られるジャンプスケアがあった。緊張緩和からの衝撃のギャップは、応用的ではあるものの、多くの場面で用いられている手法であるので、これもまた「入門作」であると感じた要因の一つである。
ただ、ババアの奇声は許さない。
・雨男の危うさ
劇中、雨男は再生回数の伸び悩みを課題に感じており、再生回数のために危険にもどんどん踏み込んでいく。上記のように、自宅で謎の人物に襲われて、その際に「あの家には関わるな」と警告されたにもかかわらず、「ここで止めたら一銭にもならない」と、間取りの謎にのめり込んでいく。これは、私たちにとってもフィクションでは済まされない、身近な話ではないだろうか。ウケたいからとなんでもかんでもSNSに投稿する。それが悪いとは言わないが、もっと慎重に考えるべきだと思う。SNSに投稿する前に、それは本当に出していいものなのかちゃんと考えよう。(つまんな教訓かい)
森垣清次(演:髙嶋政伸)との対比関係も面白い。終盤、清次の目的は莫大な財産であり、今回の事件のきっかけとなった呪いなど信じておらず、恐怖で村人を支配する手段に過ぎないと考えていたことが明かされる。清次と雨男、似た者同士であると感じないだろうか。両者ともに、ホラーと呪いという恐怖を利用して、再生回数や権威といった利益を得ている。雨男が清次にならなかったのは、間取りの謎から解明された変な家族の話を公開しなかったからだ。もしも雨男が一線を越えてしまったら?そんな可能性の一つとして、清次の存在意義がある。
・その他
キャストが、顔を観たら名前も分かるくらいちゃんと見たことある人たちばかりだったのがすごいと思った。事前情報ほぼ0で観に行ったので、石坂浩二さんが出てきたとき「そんなわけない」と思って処理していて、エンドロールでめちゃめちゃにビビった。本気度が伝わってきてすごく良かった。
チェーンソーババアは面白すぎる。あのタイミングでチェーンソーババア出てくるの、絶対違うけど、なんとなくオモコロのユーモアを見ているみたいで面白かった。
最後に好きなセリフを、
マジモンじゃねーか、これ!